八朔(はっさく)日記
八朔のこだわりについて
橋村農園の八朔は苦みや酸味が少なく、甘くて美味しいです。収穫年度によっても違いますが 糖度はだいたい15度 近くあります。
また霜が降る前に収穫したものをムロの中で熟成していますので歯ごたえがあり、プリップリッの、ジューシーな八朔になっています。
その秘密についてご説明致します。
ムロで熟成
八朔にも早生(わせ)八朔と中手の八朔があります。早生八朔は12月中旬から出荷できますが、通常の八朔はだいたい1月20日以降から出荷します。
当園の八朔は特殊な方法で熟成させます。一定の高い温度・湿度にすることでゆっくりと時間をかけて、熟成させます。
一般に樹上で熟すまで待つのが一番最高に美味しい果物になるのですが、その場合は日持ちがしなくなります。
すぐに食べる場合はその方が一番美味しいのですが、仕分けしたり輸送したりすることで採ってから数日がどうしても経過してしまいます。
また、冬の季節に八朔を収穫する関係で霜が降りる前に収穫すると霜による被害を最小限に食い止めることができるので、橋村農園では12月中に収穫するようにしています。
収穫が12月までに終わっても、すぐに食べると苦かったり酸っぱかったりします。
そこで、追熟(木から切り離して熟成させること)という工程が必要になります。
先程、樹上で成熟させると記載しましたが、樹上ではなく、木から切り離して一定の温度湿度で成熟させます。
もし、冷蔵庫に入れてしまうと熟すことができずに酸っぱさや苦さを残したまま長持ちだけすることになります。
ある程度の高い温度・湿度にするのは、各農家さんの腕の見せ所です。
当園は60年以上前にスタートしたおじいちゃんのノウハウを使って追熟させます。
実はこの地域で八朔を最初に植えたのがおじいちゃんでした。
60年を超える年月の間には様々な失敗がありましたが、失敗は成功のもとの格言通り美味しい八朔を熟成させることができています。
ムロに入れる前にはきちんと消毒をしていないと腐敗菌によって腐ってしまいます。
そのため当園では収穫の前に殺菌剤を撒くことにしています。
ムロの中では内外の温度差などが手伝って八朔の表面に水滴が大量に付きます。
この水滴が少しずつ殺菌剤を洗い流していきます。
短くても2週間以上はムロの中に入れて熟成させるのでその間に最初に撒いた殺菌剤はほとんど洗い流されています。
ムロに入れる前のこだわり
ムロに入れて熟成させるのは理解されたと思いますが、熟成するのは酸っぱさや苦味を取るのが目的です。
つまり、もともと甘くないと、熟成させても実はあまり美味しくないのです。
いわゆる味がない果物というのがたまにあるかと思いますが、それが熟成させてももともと甘くないので味がない果物となってしまうのです。
当園では甘みを増すために特別な溶液を葉面散布します。
上の写真は桃の木ですが、葉面散布の様子です。
具体的な溶液は秘密ですが、これを散布することでアミノ酸が増えて甘みが増すようです。
たまたま、文献を見ていたらより甘くなる方法を見つけたので実際に試してみると実際に甘くなったので採用しました。
この葉面散布を早生の場合は収穫の半月くらい前に行い、普通の品種(中手)の八朔は1ヶ月位前に散布します。
これによって、少し酸っぱくて苦い、しかし甘い八朔が出来上がります。
実際に採れたての早生を試食してみると、甘みの強いちょっと酸っぱい八朔でした。
この前(2021/11頃)取材に来られた方からも、『こんなに苦くない、しかも甘い八朔は初めてでした』と言われました。
栽培のこだわり
栽培にもこだわりがあります。
やはり一番は土作りです。
良い土を作らないと美味しく健康的な樹木には育ちません。
病気がちな木でしたら果実も実らないですし、果実も美味しくありません。
だから、土作りを大切にしています。
当園のこだわりは有機肥料と混同肥料を使います。また、八朔畑が八朔に適するペーハーになるように苦土石灰を撒きます。
ペーハーというのはアルカリ性や酸性という指標で、八朔に適する度合いに仕上げます。
一般に柑橘類は酸性土壌が多いです。
当園はこれまで培ったノウハウである数字のペーハーにしております。
このペーハーの微妙なコントロールが味の善し悪しを決めているので、この辺のノウハウも各農家さんの財産ということになるかと思います。
やはり、おじいちゃんの代から60年の歳月を経て作り上げたノウハウなので、安定した味の美味しさを実現しているものと思われます。
1年の流れ
ここで大まかな一年の流れをご説明します。
1月 出荷
ムロから取り出して、選果し等級に合わせて箱詰めして出荷します。
お客様の笑顔を想像しながら、今回はどんなお礼の手紙が来るか楽しみにしながら箱詰めしています。
12月 収穫
ここが一番農家としては忙しいけれどもやりがいのある時期です。
手塩にかけて育てた作物を収穫することは大変楽しいものです。
当園は収穫の際、へたを残してハサミで切り離します。
読者の皆様もへたがついているもの、へたが緑色しているものを選びましょう。
美味しいかどうかのバロメーターです。(追熟させるので新鮮というわけではありませんが)
11月 葉面散布
特殊な溶液を葉面散布します。葉っぱからも吸収できるような液体の肥料を撒きます。
殺菌剤もこの時期に撒きます。収穫してからムロに入れて追熟させるので殺菌剤でカビを抑えないと全滅してしまいます。
10月9月 肥料を施肥する
混合肥料を撒きます。骨粉なども入っているアミノ酸です。更に苦土石灰も撒きます。
この肥料は果実を大きく甘くするための施肥なので大切な作業です。
8月~9月 摘果
小さい八朔の実を摘み取って栄養分が分散しないようにします。8月末までに1回と9月初旬までに2回目を実施します。
7月 殺菌剤の散布とハーベストオイルを撒く
梅雨の季節なのでここでしっかりと殺菌をしないとカビが生えてしまいます。10日以上、雨が降り止まないと殺菌剤を散布することができません。
ハーベストオイルは虫の卵や幼虫を殺虫するオイル。オイル膜を作って、虫の幼虫を窒息死させることができます。
6月 殺菌剤の散布
カビの防止のために殺菌剤を撒きます。
5月 開花と殺菌剤の散布
5月中旬に開花するのでその頃に殺菌剤を撒きます。殺菌剤は5月、6月、7月のほぼ月一回に殺菌剤を散布して消毒します。
4月 状況に合わせて対応
3月 剪定
八朔の木を選定します。3月中には剪定を終えます。
2月ハーベストオイルを撒いて、虫の幼虫や卵を窒息死させます。ハーベストオイルの効果が高いと殺虫剤を減らすことが出来るので、ハーベストオイルは大事な作業です。
当園の八朔畑です。山の斜面で水はけがよく、日当たりも良好です。
美味しい八朔はこちらで作っています。
おじいちゃんが切り開いた八朔畑なので大事につないでいきます。